【ブリューゲル(父)】を褒める

《遊び心満載で農民生活を描いた『バベルの塔』の画家》

ブリューゲルを褒める前に、突っ込ませてください。ブリューゲルさん、あなたは一体誰なんですか、わかりにくすぎます(笑)

何故こんなことを言うかというと、美術史において、ブリューゲルさんは3人出てきます。しかも親子です。ピーテル・ブリューゲルさんとピーテル・ブリューゲルさんとヤン・ブリューゲルさんです。ん?ピーテル2回出たって??それで、いいのです。お父さんのピーテルと長男のピーテル、次男のヤンなのです。そしてお父さんは“農民ブリューゲル”、長男は“地獄のブリューゲル”、次男は“花のブリューゲル”と呼ばれてます。一般的に有名で今日褒め記事を書かせていただくのはピーテル・ブリューゲルのお父さんのほう。『バベルの塔』を描いた一番作品が有名でよく知られている方です。

よくブリューゲル(父)の話をすると、「あ、私もブリューゲル知ってます、素敵な花の絵が好きです」と言われますが、これきっとブリューゲル(次男)のことでしょうね。またブリューゲル(父)の初期の作品の中に奇怪でおどろおどろしいものがあるので、「なるほど、それで“地獄のブリューゲル”なんですね」とブリューゲル(長男)と勘違いされる方もいます。訂正しようにも名前がおんなじだし…。

さらにこのブリューゲル(父)の生涯は謎に包まれており、いつどこで生まれたかもわからない、ミステリアスな画家なのだから困ったものです。もう…記事を書くのやめようかな(^_^;)

けれども、私はこのブリューゲル(父)を褒めずにはいられないのです。『バベルの塔』を褒めずにはいられないのです。この作品は『モナ・リザ』に次ぐ奇跡だと思っています。その他にも『ネーデルラントの諺』『子供の遊び』などは数時間見てられるくらい遊び心満載の作品です。

ブリューゲル(父)は“農民のブリューゲル”の呼び名どおり、農村情景絵画に長けた画家でした。けれども初期の作品は、多分にヒエロニムス・ボスの影響を受けており、作風もそっくりです。ボスの展覧会やブリューゲルの展覧会に行くと、両方の作品が展示されることがとても多いです。しかしながら二人は師弟関係にあったわけでもなく、それどころかブリューゲル(父)はそもそもボスの死後に生まれているのです。しかしながらそのインスピレーションや寓意の表現、奇怪な作風はあまりにボスに似ていたため『大魚は小魚を食らう』という作品はブリューゲル(父)の作品であるにも関わらず、「ボス」の署名があるのです。
「……あかんやろ…」<(`^´)>
でもご安心あれ、これやったのは出版した人たちですから。

しかしながらブリューゲル(父)はその後大きく作風を変えることになります。個性あふれる人物たちにフォーカスし、その動きや表情を巧に捕らえた作品が主流となります。しかもその緻密なこと。一見何の変哲もないような作品で、油断していたら通りすぎてしまうような『子供の遊び』。よく見てください、たくさんの子供たちがそれぞれ別々の遊びで楽しんでるのですよ。その数、男の子が168人、女の子が78人、合計246人の子供たちが画面狭しと遊びまわってるのです(こんなん、数えた人がいるというのも驚き)。さらには『ネーデルラントの諺』は14の諺を絵画の中に忍ばせているのです。「一石二鳥」とか「覆水盆に返らず」とか「捕らぬ狸の皮算用」とか。面白くないですか?ちなみにこの作品には再び寓意の表現が使用されているという点でも楽しめます。

さて、避けて通れないのが『バベルの塔』です。とても緻密に描かれた作品で、ルーペを使わないと見えないような部分でも、なんと人が描かれているという驚くべき奇跡を目にします。そもそもこんな細かい絵が描けるのか。それはそう、米粒に字を書く方がいらっしゃいますが、そのレベルで絵画を描いているのです。技術もさることながら、その精神力も褒めずにはおれません。

なんとこの作品2017年に東京と大阪にやってきたのです。もちろん、見に行きましたよ。そして顔を思いっきり近づけましたが、細部は見えませんでした。用意のいい方はルーペを持参していました。
グッズを数多く買ったのは言うまでもありませんね(笑)

おすすめ10選

『バベルの塔』
『子供の遊び』
『ネーデルラントの諺』
『イカロスの墜落』
『雪のなかの狩人』
『ナポリ風景』
『乾草の収穫』
『農民の踊り』
『サウロの回心』
『盲人の寓話』