【ボス】を褒める

<多くの謎に包まれた奇怪な世界の幻想画家>

美術の褒め記事を書こうと決めたときから、ボスについては書く気満々でした。最初にリストアップした画家さんが20人ほどいるのですが、その中に入れていました。だって、あんなに奇怪で印象的な絵を描く画家ってそうそういないですもんね。一目みたら忘れられないような、けれど少し不気味で恐ろしい・・・。コロナ禍の前にはブリューゲルの絵と一緒に展覧されていたり、思えば渋谷のBunkamuraで「ベルギー奇想の系譜」という展覧会も見に行ったりしましたよ。ついぞマイブームになりかけたのが、今回取り上げたボスなのです。にも関わらず、すでに50以上の美術記事を書いた後に回されてしまったのは何故なのか。実に構想から1年以上経ってからようやく記事に取り掛かったのはどうしてだったのでしょうか。

それは・・・ボスさん謎が多すぎるんですよw 書こうにも情報が少なすぎるのですww。作品の制作年だってまるでわからないし、絵画そのものが難解で一体何が何を象徴しているかなんてわからないし(いや考察はたくさんあるけど(^_^;))、怪物たちや合成物の意味とかますますわかんないし(笑)。そもそもボスという人物そのものが謎に包まれ過ぎているんです。わかっていることは生まれといくつかの事柄のみ。絵のインパクトが強すぎて、そんな情報量の少なさが気にならなかったというのも凄い話です。

えっと、ボスさんですが本名はイヘロニマウス・アントホーニッセン・ファン・アーケン・・・・謎に包まれている割にいきなりぶっこんでくるじゃあないですか!?どうしてこんな長い名前が「ボス」の二文字で収められたのか。それは彼の生まれがスヘルトーヘンボスだったからです。ん?説明になってないですね。父も姉も兄の一人も伯父も祖父も画家だったために区別するために、土地の名称を筆名にしたとかなんとか(これもはっきりわかっていないらしい)。しかしながら情報量が無いという割になかなかの出だしではないですか(自画自賛許して)。このスヘルトーヘンボスという場所は文化面・宗教面で栄えた都市でボスも宗教団体の影響を大きく受けたようです。そりゃ、そうでしょうね、後年の作品を見てそうでなかったら唖然とするしかありません。そんな中、ボスは結婚をします。お相手は裕福で高貴な娘さんのアレイト。この結婚がボスの画家人生を大きく飛躍させることになるのです。アレイトは厚い信仰心を持っており、なおかつ上流階級にも太いパイプを持っていたこともあって、ボスのもとに聖母マリア兄弟会の礼拝堂ステンドグラスの制作依頼が舞い込んできたのです。こうしてボスの作品は広く知られ、高い評価を受けるに至ったのです。そこからかの有名な三連祭壇画の制作へと繋がっていったようです。

さて、こんなくらいですかね、情報は・・・やっぱり少なすぎる(-_-;)、それに全然褒めていない。

ということでこっからはボスの作品や技法に着目してバンバン褒めていきますよ。

奇怪な作風ばかりがクローズアップされますが、そもそもボスの強みはその素早い筆さばき。それにより勢いを保ちつつも繊細で細やかな描写を実現するのです。このことは「快楽の園」や「聖アントニウスの誘惑」などで数多くの人物(怪物含む)を驚くほどミニサイズで描いていたことからも明らかです。これは後年ブリューゲル(父)に受け継がれ美術界に燦然と輝いています。そしてもう一つの強みが独特の色彩。前述の筆さばきが繰り出す緻密なスケッチ・デッサンの上から絵の具を薄く塗り重ねることで、暗さの中に明るさ、明るさの中に暗さを表現することに成功したのです。これが楽園と地獄、人間と怪物の対比を強烈にアピールすることにも繋がっています。こうしたボスの技術は唯一無二の作品を生み出し私達の心に刻まれるのです。さらにボスは作品の演出にとても長けていたと思いませんか。小さいながらも印象的な動作、誇張されたポーズ、張り詰めた空気感、何を考えているかわからないような表情、幻想的な世界観などなど、一度見たら絶対に忘れないのも、これら演出の素晴らしさを表しています。

作品において多くの謎を残しつつも、それらは現代に至るまで考察の楽しみを与えてくれ、何度見ても飽きない作品を創り出したのです。100人いれば100通りの解釈を、100回みれば100通りの解釈を、我々は楽しみ続けられるのです。

おすすめ10選

『快楽の園』

 

『聖アントニウスの誘惑』

 

『乾草車』

 

『いかさま師』

 

『十字架を担うキリスト』

 

『エッケ・ホモ』

 

『荊冠のキリスト』

 

『荒野の洗礼者ヨハネ』

 

『東方三博士の礼拝』

 

『最後の審判』