【『竜馬がゆく』司馬遼太郎】を薦める

読書のススメ(5分で読めるよ)






私の尊敬する人物の一人である坂本龍馬。しかしそれはこの『竜馬がゆく』を読んだからに他なりません。実際の龍馬はもしかすると、私のイメージしているものとは違うかもしれません。けれども自身の尊敬する人物としてあげてしまうほど、司馬遼太郎さんの書かれたこの作品はとても影響力のある偉大な作品だったと思うのです。文庫にして全8巻からなる壮大な物語。しかしながら、この記事をおこすにあたって確認して驚いたんですが、私には8冊も読んだ記憶さえないくらい、あっという間に読めたのです。正直3~4巻くらいの印象しか残っていませんでした。ですので読む前にその巻数に圧倒される必要はありません。読みだしたらあっという間に読了してしまうことでしょう。

司馬遼太郎さんの小説は有名どころはほとんど読みました。どれも読みやすくて歴史の勉強になるので学生さんにもおススメですね。『功名が辻』や『項羽と劉邦』『国盗り物語』など名刺がわりの10選に入っていてもおかしくないようなタイトルがずらり並びます。その中でもこの『竜馬がゆく』だけは特別な輝きを放っています。日本人が大好きな坂本龍馬がここに居るのです、というより司馬坂本龍馬こそが日本人の心に焼き付き、イメージ化されているのではないでしょうか。実際坂本龍馬を扱った作品は他にもあります。私は津本陽氏の『龍馬』も読みましたし、漫画の『おーい!龍馬』や大河ドラマの『龍馬伝』も見ました。どれも面白かったですし、正しいかどうかなど私にはわかりません。けれどもどうしても司馬坂本龍馬がしっくり来てしまうのです。これはもう小説としての力でしかないと思うのです。

大体において、最初から坂本龍馬を英雄として取り扱おうとして、見事にその取扱いに成功しています。これは功罪としては「史実とは違う龍馬が描かれてしまう」ということがあるでしょう。けれども、これはあくまで歴史小説です。しかも坂本龍馬に関しては謎である部分も結構あるものです。そして司馬史観とまで呼ばれることになったこの考え方はエンターテイメントとして考えるならば“功”でしかないと思うのです。

面白いのは司馬遼太郎さんがいかに史実ではなくエンタメを重視したかというのがわかるのが、徳川慶喜についてです。この『竜馬がゆく』における慶喜像は弱々しく庇護すべき目線で描かれているのに対し、『最後の将軍』という作中においての慶喜は主人公ということもあり、とても才覚のある英傑として描かれているのです。主人公だから当たり前ですが、このように司馬遼太郎さんはヒーローをヒーローたらしめる描き方に長けていたことがわかります。

何はともあれ、この司馬史観により私のみならず日本人の多くが龍馬に傾倒したと言われます。実際にそうなるかどうかはさておき、読み物として時代を超えて読み継がれる大傑作であることは間違いありません。

レビュー

<読みやすさ>

全8巻ということを感じさせないくらい読みやすいです。なんなら8巻でも物足りないくらいではないでしょうか。読後、龍馬ロス、「竜馬がゆく」ロスに悩まされるのではないでしょうか。

<面 白 さ>

とにかく面白い。伝記ものは苦手な人でもこの作品は面白いと思えるのではないでしょうか。龍馬のエピソードのいくつか、この物語に端を発しているため、「この逸話知ってる」ということも多々出てくるでしょう。

<上 手 さ>

そりゃ、上手いわけですよ、大御所ですから。ってこの書き方何度かしてしまっていますね。文句なし巧な物語構成です。会話も粋ですっかり龍馬の世界に引き込まれてしまいます。

<世 界 観>

あっという間に幕末の世にタイムスリップです。また土佐の香りが漂ってきます。明治の新しい足音が聞こえてきます。まさに小説の醍醐味がここにあると言えますね。

<オススメ度>

もちろん自信をもっておすすめいたします。老若男女問わず誰もが楽しめる内容であり、勉強になる題材であり、大切にしたい作品となることでしょう。『燃えよ剣』と併せて読むのもよいでしょう。