【2016年読書ランキング】で褒める
2016年読書ランキング
- 『君の膵臓をたべたい』住野よる
- 『生還者』下村敦史
- 『陸王』池井戸潤
- 『望み』雫井脩介
- 『みかづき』森絵都
- 『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル
- 『本日は、お日柄もよく』原田マハ
- 『ジャッジメント』小林由香
- 『ガンルージュ』月村了衛
- 『王とサーカス』米澤穂信
- 『失踪者』下村敦史
- 『暗幕のゲルニカ』原田マハ
- 『羊と鋼の森』宮下奈都
- 『世界の果てのこどもたち』中脇初枝
- 『永い言い訳』西川美和
それぞれの一言コメント
※基本的にネタバレは含みませんのでご安心ください、それでも気になる方はここからは読まないでください。
①「君の膵臓をたべたい」住野よる
奇妙奇天烈なタイトルになかなか手に取ることができなかったが、本当に読めて良かった。読まなかったら後悔していた。想いの詰まった素晴らしい小説。ヒロインの一つ一つの言葉が心に突き刺さる。「生きることは誰かと心を通わせること」学ぶことは多く、間違いなく人生を変えてくれる作品。
②「生還者」下村敦史
山岳モノとしても素晴らしいのはもちろんだが、ミステリとしてもかなり秀逸な仕上がりになっている。圧倒的な人間ドラマの進行とともに深まる謎。すべてが明らかになったときに胸に広がるのは清涼感だった。ラストは驚かされたが納得。男のロマンが語られやすいジャンルだが、女性の活躍もしっかり描かれている。
③「陸王」池井戸潤
安定の池井戸クオリティ。安心して楽しむことができた。今作でも多くの名言をちりばめながら、ビジネスシーンをリアルに描ききった。大事なのは会社の大小ではなく、プライドを持って仕事をできるかどうかということをしっかりと教えてくれる。働く上でのチャレンジ精神を植え付けられた。
④「望み」雫井脩介
この年一番の問題作だった。自分の子供は殺人犯なのか、被害者なのか。生きていて欲しいと祈る気持ち、正しくあって欲しいと願う気持ち。究極の選択を迫られたときの心の動きを見事にとらえたのは雫井先生ならでは。真相が明らかになったとの展開もまた素晴らしい。
⑤「みかづき」森絵都
珍しく塾業界を舞台にしている。一人の男を中心に女三代の生き方を見事に描ききった大河小説的作品。教育のあり方と時代背景を丁寧に織り交ぜながら物語はテンポよく進む。児童文学で名を馳せた森さんならではの、暖かい目線が、ついにこのような大作に結びついたのかと感慨深かった。
⑥「スタンフォードの自分を変える教室」ケリー・マクゴニガル
スタンフォードの人気講師・ケリーマクゴニガルさんのビジネス実践に役立つ作品。人間の「意志力」を心理学と脳科学から分析し、いかに継続して強い意志を持ち続けるかをわかりやすく解説してくれる。これを読めば、自分の弱さを補い、克服できるヒントが見つかるだろう。
⑦「本日は、お日柄もよく」原田マハ
お得意の美術分野ではなく、池井戸作品のようなビジネスを舞台とした一作。それにしてもスピーチライターとは面白くお仕事小説として楽しめる。実際にどのような仕事かの理解も進むし、見習うべき点、学ぶべき点もたくさん書かれている。「為になる」小説だった。登場人物たちのライバルとしての戦いも面白い。
⑧「ジャッジメント」小林由香
最初は突飛は法律を題材として読者の興味を低次元で誘因しているだけかと思ったが、なかなかどうして。読み進めるととても考えさせられるシリアスな内容だった。「バトルロワイアル(高見広春)」「百年法(山田宗樹)」のように極限のシチュエーションで問題を深掘りさせてくれる。
⑨「ガンルージュ」月村了衛
正統派ハードボイルドに出会えたのは久しぶりな気がする。元公安エリートと破天荒な女教師がタッグを組む。二人のかけあいがとても面白く軽快。敵役もとてもキャラが立っており、人物設定の素晴らしさが作品の質を高めた。スピード感あふれるエンターテイメント作品。
⑩「王とサーカス」米澤穂信
もちろん優れたミステリなのだが、それ以上に哲学的要素を楽しめた。ジャーナリストは何のために存在するのか、何のために記事にするのか、激しい葛藤が主人公の心を揺さぶる。答えはそれぞれ読者に委ねられているのだが、本当の正解などないのかもしれない。
⑪「失踪者」下村敦史
下村氏の山岳シリーズ三部作の一作。仕掛けられた謎やミステリとしての完成度はランキング2位にした「生還者」を上回る。真相は少し強引でリアリティに欠けたが、山岳ものの醍醐味である登山家としてのプライドや友との絆については重厚に描かれており読み応えがあった。
⑫「暗幕のゲルニカ」原田マハ
この作品で大天才・ピカソの生き様を深く知ることができる。あまりに有名な画家だがその人生は波瀾万丈でとてもドラマチック。現在の日本と過去のフランスが交互に語られ、二つの物語が交錯する構成をとっている。それぞれどちらも単独で楽しめるくらい個性的で面白い。
⑬「羊と鋼の森」宮下奈都
この年の本屋大賞受賞作品で世間を賑わせた話題作。宮下先生の露出もかなり増えて、一躍時の人となった。作品自体も優良で、「舟を編む(三浦しをん)」に似た雰囲気を醸し出していた。ピアノの調律というマイナーな題材の中で紡ぎ出される日常はとても優しく美しい。デリケートな心理描写に唸らされた。
⑭「世界のはてのこどもたち」中脇初枝
3人の女友達のそれぞれの人生を描いた作品。幼い頃に出会った登場人物たちだが、紆余曲折あって離ればなれになってから再会できたのは大人になってからだった。3人の人生を通して戦争の悲惨さをリアルに感じさせられる。中国残留孤児の話なども、その実態を垣間見ることができるとても重みのある作品。
⑮「永い言い訳」西川美和
自分勝手な主人公で好きになれなかったが、自己で妻を失ってから様々な感情が入り乱れるようになった真意を知りたいと読み進めた。最後にようやく涙を流せたのは何故なのか、家族とは何なのか、夫婦とは何なのか。色々と考えさせられるので読み応えがあり、問題提起となった。ただ共感は難しいかもしれない。
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