【『野良犬の値段』百田尚樹】を褒める

読了後の感想(過去の読了分:3分で読めるよ)




百田尚樹さんの作品はどれも重厚で内容が濃いですね。実際、内容だけでなく作品自体、いつもページ数が多く分厚いのですが、誰もが言うように「あっという間」に読めてしまいます。劇場型の犯罪を描いた今作はなおさらでした。なんせ、疑問につぐ疑問でしたからね。

そもそも事件そのものが疑問符だらけです。ホームレスを対象とした誘拐事件が発生・・・ちょっと待って、ホームレスを人質にとっても身代金は要求なんてできないよ、あっ、怨恨!?・・・とまず立ち止まりますw。しかしながら怨恨ではなく身代金が要求されます、マスコミに!!・・・いやいやだからちょっと待ってって、ホームレスに身代金は要求できないから、ん?マスコミに??、どうしてそうなるの???・・・

これらの疑問を解決するためにも私たちはページをめくるしかなくなるのですね(^_^;)。この事件は一人の無関係の人間によってリツイートされ、またたくまに拡散されていきます。一躍、時の人となったこの無関係の人間が、いつのまにか犯人に変わって事件を主導していくことになります。すなわち彼の言うとおりに誘拐事件は進展を見せていく・・・ってだからどうしてそうなるの?なんで関係のない人間の言うとおりに話が進むの、犯人たち何やってんの?狙いは?真相は?・・・もうとにかく一事が万事こんな調子だから、どこで読むのをやめていいかわからなくなりますよね。皆さん、早くこの作品を手に取って今抱いてしまった心のモヤモヤを解消してください。

あっと驚く真相と、いつも周囲をざわつかせる百田さんの真骨頂がラストに近づく似つれて明らかになってきます。狡猾な犯人たちの彼らの正当性や、きれいに見えている犯人ではないものたちの瑕疵などを比較すると非常に面白い対比が見えてきます。百田さんは単なる劇場型の犯罪ものとしてエンターテイメントを描きたかっただけでなく、ある種の問題提起を今回もしてくれている、そんな気がしました。

全てが終わった後に、ベテラン刑事の鈴村のことが、とても粋に思えました。彼は真相を見破っておきながら、この事件を「いい話だ」と締めくくったのです。はい、またもやなんのこっちゃですね。だから皆さん、読んでください。きっと共感してもらえることと思います。

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★★

面 白 さ ★★★★★

上 手 さ ★★★★

世 界 観 ★★★★

オススメ度 ★★★★