【『ペッパーズ・ゴースト』伊坂幸太郎】を褒める

読了後の感想(2分で読めるよ)

いきなりですが皆さん、ウルトラ怪獣の『タイラント』って知ってますか?バイオハザードじゃないよ、特撮ヒーローのウルトラマンに出てくる怪獣だよ。画像張っておきました。この怪獣は過去に出てきたウルトラマン怪獣のいいところを集めてできた最強怪獣(実際はもっと強い怪獣がたくさんいるんだけど)の触れ込みで登場したんです。もう忘れたけどレッドキングの脚、ベムスターの腹、バラバの腕、イカロス星人の耳、ハンザギランの背中、キングクラブの背中・・・あと忘れた、調べてきます・・・。(中座)あ、首から上はシーゴラスらしいです。それとイカロス星人ではなくイカルス星人でした(^_^;)

いやいやウルトラ怪獣の褒め記事じゃないからw。伊坂さんの褒め記事だから。新作の『ペッパーズ・ゴースト』を読みました。この作品ですが、先述のタイラントのような小説でした。何が言いたいかと言うと、いくつかの伊坂作品を彷彿とさせる内容だったんですよね。小説内小説に出てくる二人はなんだか『殺し屋シリーズ』みたいだし、文体や粋な会話などは『ゴールデンスランバー』を思わせるし、ドタバタした雰囲気は『陽気なギャング』に似ている気がするし、どんでん返しは『アヒルと鴨のコインロッカー』のような驚きがあったし、世界が交錯するシュールな世界観は『オーデュボンの祈り』というのはこじつげすぎかな。でも親子関係を考えると『オーファーザー』だったり、先生と生徒の関係は『逆ソクラテス』のオマージュにも見立てられるような。とにかく伊坂色満載の作品なのです。初回限定のポストカードに伊坂先生自身が「今までの自分の小説の特徴が集まったような物語になりました」という言葉に誘導されたのかもしれませんが、伊坂ファンならそのような錯覚を起こして当然でしょう。そんな伊坂テイストにニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』を絡め、新鮮味も忘れていないあたりはにくい演出ですね。

大学の頃、『ツァラトゥストラはかく語り』 を読みましたがさっぱり頭に入ってこなかったので、哲学科の友達に解説をしてもらったことがあります。その中で頭に残っていた“永劫回帰”の考え方。このことが今作では軸となっていました。受け売りの解説をしておくと「この世の全てに目的地などなく、結局は同じことを繰り返しているだけである」という考え方。そしてそこから「人生は無意味なもの」という虚無感が導かれてしまうのです。結局、ニーチェはこの考えに辿り着いたが故の苦悩にうちひしがれて、“超人思想”という更なる考え方を編み出します。もうここまで来ると私ももう理解していませんが、なんとなく、【永劫回帰は同じ事の繰り返し、つまり円環である ⇒ それゆえその輪を大きくしていくことに意味がある】なんて漠然ととらえています。(哲学専門の方、ごめんなさい、素人理解なので見逃してね)とにもかくにも、今作を読むうえでこんなに悩まなくて大丈夫ですよ~。永劫回帰くらい知っておけば、というより知っていなくても物語はちゃんと追えますからね。

でもタイラントは欲張り過ぎてウルトラ怪獣としては最強となりえずそこまで有名でもありません。集結したことによるワクワクを提供してくれる怪獣でした。そういう意味では『ペッパーズ・ゴースト』も伊坂先生の代表作という感じとはちょっと違うかな。今作単体でワクワクできる感じの作品でしたよ。

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★

面 白 さ ★★★★

上 手 さ ★★★★★

世 界 観 ★★★★

オススメ度 ★★★★