【『ザ・レイン・ストーリーズ』間埜心響】を褒める

2021年6月19日

読了後の感想(3分で読めるよ)




しおんさんは私の大切な友人の一人で、いつも私の褒め活や褒め記事を応援してくれています。だからと言って、そのお礼に褒めるというのも少し違うような気がしていました。「褒め屋は褒められないときは黙っている」と公言しているだけに、「読むよ」と言ってしまって掲載がない場合、「良くなかったんだ」とバレバレのため、念のためしおんさんに内緒で読みました。そして序盤、焦りました(^_^;)。「あれ?これ展開が読めてしまう、ストーリーがベタすぎる」「読むことを伝えなくって正解だったかな」と思っちゃいました。けれども、この件、しおんさんは最後にきちんと伝えてくれていました。すなわち「すぐに気づく仕掛け」だったのです。「なんだ、確信犯だったのね」。この撒き餌は見事に成功していたと言えるでしょう。あまりにわかりやすい伏線や予想しやすいストーリーを用いることで、細かな伏線や隠された背景から目を散らす効果がありました。

さて連作短編を取る本作品ですが、短編というよりショートショートの連作でした。200ページに12編が詰められており、一作につき約15ページです。軽快で読みやすいため、一気読みできるのですが、それもまた作者の仕掛けにはまっていると言えるかもしれません。一息に読むと見落としが生じるのです。また時間軸や空間軸をうまくずらしているので、軽い叙述トリックの要素も持っているのです。すなわち、再読させる小説としてその形を浮き上がらせてくれたのです。これについては非常に新しさを感じました。

連作短編であることは大前提ですが、あえて言うならば私はエピソード6について単独で長編を読みたいと思いました。これはまず題材として素晴らしく、「束縛からの解放」を上手く描いています。外伝でも後日譚でも構わないので、読んでみたいと思わせる魅力を持っています。

タイトルからわかるように、「雨」をテーマに紡ぎ出された物語ですが、絵が好きな私としおんさんなのであえて触れておきます。町行く人々の雨傘が開いた様子を見事に捉えた素晴らしい装丁もイメージ通りなのですが、しおんさんのTwitterのヘッダーは印象派絵画の隠れた巨匠、ギュスターヴ・カイユボットの「パリの通り、雨」が使われています。私にはこの絵の世界観を作品に見ることができました。

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★

面 白 さ ★★★★

上 手 さ ★★★★★

世 界 観 ★★★★

オススメ度 ★★★★