【『三国志』吉川英治】を薦める

2021年9月23日

読書のススメ(5分で読めるよ)

誰もが知っているでしょう、『三国志』。小説においては本日紹介する吉川英治さんのものが有名ですが、北方謙三さんや宮城谷昌光さんと言った大御所さんも手掛けており、さらには三国志演義やキャラクターものも含めると多数作品が存在します。また横山光輝さんの60巻からなる漫画も有名で、私も全巻持っており何度も読み返しています。ちなみにこの横山光輝さん、『魔法使いサリー』の作者でもあるんですよね。最近では福田雄一監督によりコミカルに映画化されましたが、こういった映像化も日本のみならず多くの国でなされており有力コンテンツの一つとなっています。

私の人生の小説10選でも5位に選んでおり、ぜひとも紹介したい作品となっています。この作品を手に取ったのは高校1年生のときでした。親からも何度も薦められてしぶしぶ読み始めたのが本当のところでしたが、次の日には学校に持っていって授業中にも関わらず隠れて読んでいたくらい夢中になったのです。ちなみに分厚い文庫で8巻あったのですが確か3日かからず読了したと思います。その2~3日のことはどの時間帯も思い出せます。朝、学校行く前に朝食を取りながら読んでいたこと、通学は自転車だったので無理でしたが学校についてすぐに鞄から本を取り出したこと、授業中に隠れて読んだ事はもちろん、お弁当を猛スピードで食べきって読んだこと、返ってきて西日の入る部屋で汗かきながら読み続けたこと(ちょうどこの頃、長坂橋w)、晩御飯に呼ばれたのに読み続け叱られたこと、見たかったドラゴンボールをすっ飛ばして読み続けて後悔したこと、勉強机に向かって勉強せずに読んでいたこと、布団にくるまって暗がりでなお読んでいたことなどなど。おそらく人生で一番集中して本を読んだ瞬間だったと思います。

何がそんなに面白いって英雄が次から次へと出てくる、その数尋常じゃないです。予備知識を知らずにそれを一覧にされると圧倒されて読む気を失うのではないかと思うくらいです。三国志のゲームをしている人はわかると思います。単なる歴史小説ではまとめられない大河小説。キャラクター一人一人にドラマがあります。これらの英雄たちに惚れ込むもよし、諸葛孔明らをはじめとする軍師たちの兵法を楽しむもよし、それをビジネスに活かすもよし、曹操・劉備らのリーダーとしての人心情握力を学ぶもよし、それをマネジメントに活かすもよし、国家の興亡に思いを馳せ、時代の流れを感じ取るもよし、もちろんこれは吉川英治氏の作品なので吉川氏の快活な言い回しや痛快な活劇を楽しむもよしです。この三国志から数多くの戦略・戦術・名言・ことわざが生まれています。同じ時代、日本では国もなく土器などを作っていたのだから驚いちゃいますよね。

レビュー

<読みやすさ>

本文にあるように私は一気読みでした。ただあまりに壮大すぎる物語ゆえ挫折したという話も聞かないではありません。そういう意味では世界観やキャラクターをつかみ取るまでの序盤は読みづらいかもしれません。けれども関羽・張飛に加えて趙雲が活躍し始めるあたりから読みやすさは加速します。そして英雄たちが舞台を去っていく最後のあたりからペースが鈍るかもしれませんね。

<面 白 さ>

面白くないわけがありません。面白いのです。もちろん自分が惚れ込んだキャラクターがどのような結末を迎えるかにおいて一喜一憂することはあると思いますが、そのことを含めて面白いということではないでしょうか。ちなみに私の母は関羽が大好きでしたが、関羽が死んだとき大泣きしていました。「どうしたん?」「今、関羽が死んだ(涙)」「いや、2000年前に死んでるから」

<上 手 さ>

陳舜臣さんも好きな作家さんだったので『秘本三国志』を読んだのですが少し難しかったです。そして吉川英治さんの作品が基となりすぎて違和感を覚えてしまいました。これは司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』でもありうる事なのですが、日本人の竜馬像や三国志像(特に曹操・劉備・孔明)が強すぎるのです。それは裏を返せば一番多く受け入れられたということ。だから上手さがあるのでしょう。

<世 界 観>

日本の歴史においても戦国時代というのは壮大です。ましてやそれが中国の歴史となるとスケールが違います。これ以上の世界観があるでしょうか。けれどただの歴史だけでもないのがミソです。しっかりと登場人物たちの深層心理にまで迫り、戦術においても緻密に描いているためミクロにマクロに大きな世界観を感じ取ることができるでしょう。

<オススメ度>

歴史、特に中国史が苦手だという方はしんどいのかもしれませんが、そうでなければ間違いなくオススメできる作品です。あわせて三国志関連の書物は全ておすすめです。小説のみならず、ビジネス書やサイドストーリー、雑学に至るまで、全てが面白くなります。そのためにもぜひ三国志読んでいただきたいです。