【2008年読書ランキング】で褒める

2021年10月11日

2008年読書ランキング

  1. 『空飛ぶタイヤ』池井戸潤
  2. 『図書館戦争』シリーズ 有川浩
  3. 『悪夢の観覧車』木下半太
  4. 『悪人』吉田修一
  5. 『流星の絆』東野圭吾
  6. 『告白』湊かなえ
  7. 『盛田昭夫語録』盛田昭夫研究会
  8. 『死神の精度』伊坂幸太郎
  9. 『天使のナイフ』薬丸岳
  10. 『聖女の救済』東野圭吾
  11. 『ジョーカー・ゲーム』柳広司
  12. 『氷の華』天野節子
  13. 『黒の狩人』大沢在昌
  14. 『警官の血』佐々木譲
  15. 『不祥事』池井戸潤

それぞれの一言コメント

※基本的にネタバレは含みませんのでご安心ください、それでも気になる方はここからは読まないでください。

①「空飛ぶタイヤ」池井戸潤

今や社会派小説の第一人者となった池井戸さん。この作品は世間を賑わせた大手自動車メーカーのリコール隠し問題を題材に関係者の様々な視点から描かれている。脱輪したタイヤで命を奪われた主婦。遺族は?運送会社社長は?メーカーの対応は?大企業が抱える大きな病魔とそれに立ち向かった人間の壮絶なドラマ。

②「図書館戦争」シリーズ 有川浩

有川氏の代表作にもなった図書館戦争シリーズ。外伝も含めて全て通してこの順位とさせてもらった。言論の統制と自由の戦いが今ここに始まる。世界設定も秀逸で見事だが、それ以上に魅力的なものが登場人物たちだ。主人公をはじめ個性的で尊いキャラクターたちが輝いている。

③「悪夢の観覧車」木下半太

観覧車をジャックするという大がかりなドタバタ劇だが、その内容は十分に練られており味のある傑作サスペンスとなっている。白昼堂々、公開誘拐に絡む何人かのヒーローたち。収拾がつかないような展開から大きな感動が待つラストへ。読者をのめりこませるテクニックは脚本家としての真骨頂なのだろう。

④「悪人」吉田修一

本当の悪人は誰なのか。人間の持つ表の顔と裏の顔。本質をついた名作と言えよう。殺された保険外交員、その事件の背景にあったのはあまりにも不公平でいびつな社会が関係していた。テーマの重厚さとは裏腹にストーリーに飽きが来ず、ページをめくる手がとまらなかった。

⑤「流星の絆」東野圭吾

切ない感情がつまった東野圭吾さんの原点回帰的小説。父親を殺された腹違いの3人の子供たちの復讐劇。しかし末っ子の妹は皮肉にも容疑者の息子を愛してしまった。そして驚愕の真相。ミステリの域を保ちながらも読者を泣かせる展開はストーリーテラーとしての力を感じさせる。

⑥「告白」湊かなえ

各紙で絶賛された大型新人・湊かなえさんの衝撃デビュー作。その後イヤミスというジャンルをこの世に知らしめた作風は読者の興味を強烈に惹きつける。生徒思いの教師の娘はクラスの生徒に殺された。始業式で始まった復讐劇は思いもつかない広がりを見せる。マルチアングルを用い様々な心情を理解させることに成功した。

⑦「盛田昭夫語録」盛田昭夫研究会

SONYの創始者・井深大さんを常に支え、世界的企業にまで育て上げた盛田昭夫名誉会長の言葉をまとめたビジネス書。日本の小さな一企業時代から世界を意識し、ブランド擁立に信念を燃やしたその姿勢は今なお色あせる事がない。昔に語られたた思えないくらい言葉が新しい。

⑧「死神の精度」伊坂幸太郎

シュールな世界観が独特の伊坂幸太郎。今作では「死神」にスポットをあてているが、多くの人が抱くような暗い負のイメージのものとは違い、ユーモラスな設定。これが奇抜で面白い。人間社会を死神が見つめたときの微妙なずれを上手く描き出している。また、一方でクールな側面も映し出す。

⑨「天使のナイフ」薬丸岳

少年法に守られた犯罪加害者の裏で、犯罪被害者がないがsぢろにされている。そんな問題に取り組んだ問題作だが、事件はツイストにつぐツイスト。妻を殺した少年たちが次々と殺されていくのは何故か。待つのは驚くべき結末。多くの伏線が人間模様の彩りを一層際立たせている。

⑩「聖女の救済」東野圭吾

ガリレオシリーズの一作で長編としては第二弾。天才博士・湯川をして完全犯罪と言わしめた女の仕掛けた事件の真相とは。事件は論理的ではあるが事件をおこす人間は非論理的であった。松本清張曰く「小説である以上、完全犯罪はありえない」とのことだが、今作ではどうなのか、その目でお確かめいただきたい。

⑪「ジョーカー・ゲーム」柳広司

スパイを題材とした珠玉の連作短編小説。その存在を知られる事は死を意味する。彼らは互いを化かし合い、自分たちの味方を巧妙に増やしていく。虚々実々の緊迫した展開は手に汗握る。彼らを養成する伝説の諜報員の生き方はスタイリッシュで発言は極めてクールだ。

⑫「氷の舞」天野節子

自費出版でベストセラーにまで至らしめた天野さん執念のデビュー作。不倫相手を殺人した主人公だったが、実は自分自身が大きな罠に陥っていた。同時に主人公を追い詰める刑事とのたたかいは圧倒的なリーダビリティを放ち、読む者に息つく暇をも与えない。

⑬「黒の狩人」大沢在昌

ハードボイルドの名手・大沢在昌さんの「狩人シリーズ」第三弾。新宿を舞台に中国の裏社会に対して刑事と外務省のコンビがたたかいを挑む。登場人物が多く、謎も多いので深みがある。それでいてスピード感のある文体は読み手に負荷を与えず、真相へと一直線に向かう。ノンストップアクションの決定版。

⑭「警官の血」佐々木譲

三代にわたって警官となった男たちを描く警察大河小説。壮大なスケールで物語りは進み、事件そのものではなく警官としての信念などに力点を置いている。もちろん重厚な作りで臨場感あふれる事件も魅力。祖父と父の死の真相に辿り着いたのはその孫だった。

⑮「不祥事」池井戸潤

銀行内部の不正を暴く臨店指導員・花咲舞は曲がった事が許せない直球型のヒロイン。仕事は優秀で高い能力を持つものの、実は立ち回りは完璧とは言えない。そんな不完全な彼女が真相追究のためにとる行動は不器用だが喝采もの。腐敗した組織にくさびをうつ。