【『ミッキーマウスの憂鬱』松岡圭祐】を褒める

読了後の感想(3分で読めるよ)







松岡圭祐さんの作品を読むのはいつ以来でしょうか。「千里眼シリーズ」「催眠シリーズ」「Qシリーズ」他多数のシリーズをお持ちの作家さんで、私自身、千里眼シリーズは新作を心待ちにしていた読者の一人でした。どれもとても読みやすく説得力のある内容で、どこからそんなに奥深い世界観が湧き上がってくるのか不思議でした。こういったシリーズもの以外では「バグ」くらいしか読んだ事が無かったので、それ以来の作品読了となりました。

取り扱ったテーマがあのディズニーランドということで、かなり真に迫ったというか、本当にここまで書いていいのかという驚きを持ちながら読みました。実際、夢の国は裏側をあまり見せるべきではないでしょうし、もし知りたくない方は絶対に読んではいけないという、オススメしづらい作品に入るのかもしれません。

ただ、一方でディズニーランドを運営するオリエンタルランドのその手法はビジネスモデルとしても有名であり、こういった裏側にあえて焦点をあてて、社員教育などを指南する書物もたくさん出ているので、人事の私にとってはこれまでもこのバックヤードの世界にはとても興味がありました。この松岡作品については、そういったビジネス要素があるわけではないのですが、その世界観を表すにあたってクスッと笑えたり、なるほどと頷けたり、やはりとても上手く物語という形にされたなあと感服しました。

ここからはネタバレではありませんが、夢をこわすかもしれませんので、それがイヤな方はここで読み終えていただけますようお願いします。

 

 

 

では、構わないという方は引き続きどうぞ~(短いですが(^_^;))

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アルバイトとしてディズニーランドで働く事になった主人公は多くのお客様と同様、夢の国にそれこそ夢を抱いて勤めはじめます。しかしそこにあった驚くべき真実。私たちの想像を超えるような事実。そのような大きな壁にぶちあたりながらも主人公は前向きに仕事に向き合い、突き進んでいくのです。本当かどうかはわかりませんが、ショーやアとラクションにおける序列、キャラクターにおける序列、また仕事の役割における序列。作品自体が古いこともありますが、昭和の時代を象徴するかのような縦社会。今なら問題となるパワハラ(殴って血を流すシーンまである)も描かれており、夢の国とは到底思えないような現実がそこにありました。けれども作品はそういった側面を批判する物語ではなく、逆境に対しても諦めず、時にはマニュアルを超えてでも、自身の思いを貫き、次第に周りを巻き込んでいくというとてもよろしき展開となっています。小気味よいテンポでとても読みやすい小さな青春小説として楽しめるでしょうね。

 

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★★★

面 白 さ ★★★★★

上 手 さ ★★★★

世 界 観 ★★★

オススメ度 ★★★