【『パーマネント神喜劇』万城目学】を褒める

読了後の感想(2分で読めるよ)

万城目学さんにしては珍しい短編集。なんでも『世にも奇妙な物語』にも使われたとか。直前に出された『バベル九朔』が少しそれまでの万城目作品とは雰囲気が変わっていたこともありファンの間では戸惑いもあったとか。そんな私も実は『バベル久朔』についてはちょっと変化をつけられたかなと思っていました。その直後に出されたのが今作でした。当時、手を取りながらも直前で単行本での購入を見送ったのですが、買っとけばよかったかな(^_^;) また万城目ワールド全開のとても面白いお話でした。タイトルからは想像できるように、短編一つ一つに神様が出てきます。そして面白い設定なのですが、その神様が全知全能なんかではなく修行中の身というか、サラリーマンのように階級があって、昇進を目指し、そして先輩や後輩関係なんかもあって、まさに人間世界をそのままトレースしたかのような描き方なのです。それでいて人間界の運命を左右しようというのだから、あら不思議。上手くいくも上手くいかないも、なんだか運命に任せるというか・・・ん?神様が運命に委ねる??? って感じでもう面白いw そんな馬鹿馬鹿しいような設定の中に、人間味があふれる(神様なのに!?)というか、親近感を覚えるというか、とてもかわいく映ってしまうのです。そして、全知全能でないからこそ、味があり、ほっこりできるようになっているのです。このアプローチはなかなか新しいですね。決してチートキャラとして神様を使うのではなく、むしろ人間と対等の場所に引き込むことで、それこそ“神の力”というより“数奇な運命”を感じるようになっていて、ここに出てくる神様の匙加減がなんともいい加減で面白く、人情があって(いや神様だから神情か)温かく、きっかけだけを作ってくれているようで好きです。なんというか、大阪生まれの大阪在住の私としては、大阪のおっちゃんおばちゃんのような雰囲気を、ここに出てくる神様に感じちゃったわけです。神様のクセにいい加減なのは、大阪人の決め台詞「知らんけど」に通ずるような感じもしますしね。それでいて「なんでも言いや、ええようにしたるさかいに」というお節介さなんかもここの神様に感じたりしましたよ。いささか設定が甘いところも含めて、この万城目ワールドはオススメできるのです。

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★★

面 白 さ ★★★★

上 手 さ ★★★★

世 界 観 ★★★★

オススメ度 ★★★★