【『ルビンの壺が割れた』宿野かほる】を褒める

読了後の感想(2分で読めるよ)

賛否両論分かれる話題作を読みました。なるほど、賛否わかれるわけですね。きっと「大どんでん返し」の触れ込みや推薦文に対して期待値が上がって読んで方々にとっては肩透かしをくらったというところでしょうか。一方であまり事前情報を持っていない方々や、私のように事前の酷評を聞いていた人はそれなりに楽しめたという感じのようにも思えます。私も触れ込みに左右されたおそれがあるので、読み方と評価が影響してしまうタイプの作品だったかもしれません。

個人的には「大どんでん返し」については(・・?でしたw。読書垢の方はたくさんの本を読まれていると思いますので、これ以上の大どんでん返しをよくご存じでしょう。歌野さんの『葉桜の季節に君を』あたりが納得のどんでん返しでしょうか。予想を裏切るという点では貫井さんの『慟哭』などは圧倒的ですし、叙述トリックを探せばいくらでもどんでん返しはありますからね。折原一さんの作品を手に取るだけで十分だと思います。なので今作の触れ込みを「大どんでん返し」と思わなければOKです(笑)。そもそもトリックや伏線回収(そもそも伏線というほどのものはありません)に期待する作品ではないのです。

この作品の褒めポイントは読後の振り返りにあるように思えます。もしそういうオチであれば、登場人物(2人だけ)は、そのときどのように思っていたのだろうと想像することに面白みがありました。謎が深まったり、想像を広げたり、突っ込んだり、納得したり。明確な回答がないことに不満を感じる方もいるかもしれませんが、そこは人の心と割り切ればいいと思います。そもそも人の心の奥底なんて不可思議で理不尽で非論理的なものですからね。

手紙形式で語られる作品は宮本輝さんの名作『錦繍』、最近では湊かなえさんの『往復書簡』などがありますが、これらは作品として隙の無い完成度の高い作品です。なので読者にあまり想像する余地を与えてくれない気もします。一方で今作は自由度が高いです。『葉桜~』では振り返りは面白さしかありませんでしたが、今作では振り返りにおいても読み手の人物評がころころ変わり惑わされます。これこそ“ルビンの壺”ではないでしょうか。ビジネスにおけるベストセラー『七つの習慣』でもこの考え方は出てきたりします。モノの見方というのはとても面白いものですね。

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★★★

面 白 さ ★★★★

上 手 さ ★★★

世 界 観 ★★★

オススメ度 ★★★