【『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ】を褒める

読了後の感想(2分で読めるよ)

今の時代にとても合っている作品でしたね。私も仕事柄、従業員に対して働きやすい職場を提供しようとしますが、実際にはそれを現実にすることは難しくて、よく実体と合っていないと叱られたりします。多様な価値観を受け入れようという動きを知る中で、必ずこのような事実と向き合うことになるのでしょうね。

前置きが長くなりました、この作品は国際結婚をしたブレイディみかこさんがイギリスにわたり、人種や民族、貧富の格差などにおける差別を実感しどのように、渡り歩いてきたかがテーマとなっています。そして作者の目線というよりは、息子が学校で体験してきたことや実感してきたことを通して、キラリと光る息子の視点などをうまく掬い取った粋なエッセイ的小説なのです。一昔前、田口ランディさんが、当時は斬新だったネット社会の人間関係などをうまく掬い取ったのと、とても雰囲気が似ているような気がしました。それでいて中身は、大きな違いがあって本作品はとても目線が対等(田口さんが対等じゃないという意味ではないですよ~)で、凄く好感が持てるのです。差別についても非難いて遠ざけるのではなく、それらを受け入れることが前提で、どのように乗り越えていくのか(そんなに大げさにさえとらえていない)、だからといってだんまりを決め込むでもない。作者が親の立場から子供を諭している形でもなく、思いもしなかったことで息子から教えられたという形をとっているのが好感を持たせる効果があるように思いました。

決して達観した考え方を掲載しているのではなく、一緒になって現実を見つめ続けているというのはエッセイにおいてとても重要な要素のように思えます。もし答えが欲しいのであれば、読者は小説ではなくノウハウ本なり内観本、哲学書を手に取ることでしょう。また単純な育児記録なのであれば、これまたたくさんの育児書や体験談が出版されていると思います。また思想や意見であっても他に提示される書物はありますし、それをつらつらと書かれても、困ってしまう読み手もどうしても出てくることでしょう。本作はとてもさりげない、読み手の状況や背景を捻じ曲げるようなことはなく、ただただ自然につづっているのがとても心地よく、ちょうどよいのではないでしょうか。続編も話題のようですね。

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★

面 白 さ ★★★★

上 手 さ ★★★★★

世 界 観 ★★★

オススメ度 ★★★★