【『2020年の恋人たち』島本理生】を褒める

読了後の感想(3分で読めるよ)






島本理生さん、初読みです。なんだかもっと早くに読んでいてもおかしくなかった作家さんなのに、なんでしょうね。いつのまにか時が経ってしまい、未読の作家さんとなってしまっていました。Twitterで結構人気の作家さんでもあるので、これは今度こそ必ず読もうと、この作品を手に入れたのですが・・・これまた積ん読状態になってしまって、本当に島本さんには申し訳ないですね。いよいよ読んでみて、思ったのが「私の大好きな山本文緒さんにも似た世界観だ」ということでした。誰しも思う事でしょうけど「もっと早く読んでいれば良かった」というやつですねw。

さて物語はアラサー女子の恋のお話。仕事と恋の両立なんてテーマは文緒さんも得意なテーマであり、本屋大賞候補作品となった「自転しながら公転する」にも見られたものでしたね。少し違うのは本作品の主人公はとにかく恋多き女性で、傍からみれば男性に苦労せず、常にパートナーとなる男性がいるということでしょうか。まあ、羨ましいとも思える境遇で男運に恵まれているようなのですが、どうやらそこは少し違うようです。この主人公自身の生き方や考え方、価値観にあてはまる条件と照らし合わせると、なかなかそうも言えないのです。「おいおい、そんな贅沢な悩みかよ」とお叱りの声も聞こえてきそうですし、実際そういう観点もないわけではありません。けれども、そこが島本さんの上手いところであり、やはり目線を合わせれば一人の女性として、この上なく悩み、幸せという形におさまらないことを上手く映し出しているのです。しかもその心理描写が上手い、情景描写が上手いと来ています。とても面白い恋愛ドラマの脚本のようですし、実際映像化されているんですね。

読み手からすると、ここに登場する数々の男性(恋人にならないような関係の人物も含めて)を、自分なら誰を選ぶだろうか、誰となら幸せになれるだろうかというように読む楽しさもあるのではないでしょうか。また自分が主人公ならどのような選択をするのかという面白さもあると思います。ある意味、読者参加型の小説であるとも言えるでしょう。ただ、共感できない方にとっては、「なんなの!?」となってしまう事も考えられるためオススメ度は控えめにしておきますね。

簡易レビュー

読みやすさ ★★★★★

面 白 さ ★★★★

上 手 さ ★★★★★

世 界 観 ★★★★

オススメ度 ★★★